名物女性編集者・牧野姉さんもすごい。しばらく前、このテストレポート欄で、唐突に“前号のあらすじ”と来て、わあっと叫び、しばらく自失していたりした。この文章感覚、ただごとでない才筆だ。アキバの大元帥・島川センセーの顔を逆撫でしてくれる奇襲コマンドもよいし、コータリ氏のひねくれ感覚がウリの中年の哀感迫るツッコミもよい。『だサル』いしかわじゅん先生、酔余の漫歩みたいな浮遊感覚もよい。水口画伯のローン地獄のお笑い草紙も格別だ。マンガキャラ“地獄の編集者”アカザーもシャクライもすでにして旧知の仲だ【注1】。 わたしはウィンドウズ世代だから、まだパソコン雑誌は2、3年しか読んでいないが、真先に読んだのが最強のお笑いパソコン雑誌『EYE・COM』で、「父上にもっとも相応しいパソコン雑誌を選んで差し上げました」という息子に恩義を感じている。それだけではない、領収書コレクター・キングのF岡編集長もハード松村も、偽善者呼ばわりの目が笑わないキクチ【注2】もみんなみんな知り合いで、これほど居心地の良い雑誌はどこにもない、と書いたところで、ひらりんがわたしの後頭部を殴りつけた。 ええい、鬱陶しい、ゴマスリはええ加減にせんか。言霊使いの平井和正が聞いて呆れるわ。ボーイズども、性懲りもない、アホの言いぐさなんかに耳を貸すな。こやつは今、言霊が切れて、禁断症状を起こしとるのだ。言霊はヤクよりもよっぽど効くが、そのぶん禁断症状も激しいのだぞ。こやつ平井和正は、リブレットの再セットアップで不慮数百回、フロッピーを取っ替えひっ替えスロットに出し入れしとるうちに、頭が悩乱しちまい、普段やったことのないゴマスリに如何わしい快楽を覚えとるのだ。ふん。言っとくが、ワシはアンチMS派だぞ。しかし、毎週メールを寄越すビルGは好きだし、オメーラの元社長・西和彦の『デジタル日記』も愛読しとる。よいか、デジタル日記、絶対に打ち切りなど許さん。今際のキワまで書き続けさせい。西和彦かわゆいのお【注3】。その文章もキュートで微笑ましい。まことに得難いタレントというべきだな。使途不明金60億だと? かまわん、ひらりんが許す。600億だろうと1200億だろうと許す。米国の累積赤字と比べてみよ。吹けば飛ぶぞ。 済みませんお歴々の皆さん、ひらりんがなにやら口走っておりましたが、あのトリックスターはいつも本気ですので、冗談など決していわないバケモンですので、どうぞ寛大なお気持ちで許してやってください。さて、急いで本題に戻るが、大容量HDDに積み換えて、総計64枚のフロッピーを、機械に命じられるまま唯々諾々と挿したり抜いたり、言葉にするとかなり厭らしい作業を7時間にわたって脂汗の吐き気のうちに難行苦行として続けるのだ。わたしはもう済ませたが、読者のボーイズはこれからだ。山珍居へ出掛けて季節ネタの春巻(潤餅というのだ)を食してくる間に済ませておけい。あれっ、またひらりん弁だ、おかしいな。なにしろ多重人格ですので、済みません。ちょっとトイレに立った間に割り込みをかけられたりするんで。しかし、もうコントローラーを取り戻したので大丈夫だと思うが。 ユーザーが味わう地獄をわかってるのかっ!
しかし、ひどいもんだ。こんな苛烈な重労働をユーザーに平気で押しつけるメーカーの鈍感さ、容易なものではないぞ。このテストレポートに使用したリブレットは、すべて自前で、メーカーに義理はない。せめて、おたんこ、ぐらい言わせろ。くらあっ、メーカーの社長っ、おめーも1回ぐらいユーザー地獄の苦役を味わわんかっ。困ったことだ。調子に乗ったひらりんが出ずっぱりになってしまいそうだ。急いで、今回のテーマを実践してしまおう。 HDDを換装するとHDDが余るのだ
で、アキバの大店『T-ZONEミナミ』で獲ってきたのが『PortableDock』だ。写真を見よ。PCカードでリブ本体に連結する。ほれ、810MBといえば結構な大容量のリムーバブル・ドライブの誕生だ! リブレットの薄型HDD、ちょっとガタつくから、エアシートでもかましておくとよい。 ところで注目! このPortableDockに積まれたHDD、このままではリブレットのBIOS、認識してくれんぞ。ここだな、多くのボーイズがまごつくのは。リブレット本体の内蔵HDDはマスターで、余計者のHDDはスレーブだ。マスターとスレーブなんて、パソコン世界でまさかSM感覚を味わえるとは思わなかったぞ。余計者のHDD、リブレット本体の女王様からすると、まさしくスレーブだ。生意気な余計者のHDDなど認識して貰えんのだ。 スレーブにはスレーブの生き方がある。ジャンパー・ピンを挿して、スレーブの証を見せねばならぬ。ひれ伏してスレーブの証拠を見せれば、ほれ見ろ、すぱっと認識して貰えたろうが。 IDEタイプのHDDがマスター、スレイブの永遠の主従関係にあることを、つい失念するのだ。女と男も永遠のマスター、スレーブの関係であることも決して忘れるでないぞ、ボーイズどもよ。 <週刊アスキー 1998.9.17掲載>
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©Kazumasa Hirai, Yuki Yogo, LUNATECH |