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ワシは大嫌いなのだ。無数の邪悪な蛇のように絡み合ったコード類が!

Libretto60&70 東芝
●価格/25万8000円(Lib60)、26万8000円(Lib70)
●CPU/ペンティアム100MHz(Lib60)、MMXペンティアム120MHz(Lib70)
●メモリー/16MB ●HDD/810MB(Lib60)、1.6GB(Lib70)
●グラフィック/6.1インチTFTカラー液晶、640×480ドット(1677万色)

苦難の道はまだまだ続く

ひらりん
 前回は、連載1回分を完全にひらりんに乗っ取られた。あの高慢ちきで冷酷なひらりんがノリまくって喋りまくりなのだから、後始末が大変だ。だいたい、このわたし平井和正がひらりんのほんの一部分でしかないなど、だれも信じてくれないからだ。ひらりんの後始末は全部わたしに押しつけられる。けえいっ、致命的ひらりん量だって、笑えるよな。だれか等身大ひらりんフィギュア、造ってくれないか。わたしは毎日そいつを殴りつけて体を鍛えたいのだ。
 でっ、まことに業腹だが、前回のアナだらけのひらりんのお喋りを補足しなきゃならん。『DriveCopy』の使い方だ。そんなの取説を見よ、といいたいところだが、その冷酷さ、どこがひらりんと違うとなじられそうだから、もう少し丁寧に補足する。原器HDDの全データ、完璧にご新規さまHDDに引っ越しさせる大魔法だったな。ボーイズも薄々知っておろうが、単にデータをコピーしたところで、大抵のアプリケーションは動いてくれん。
 当たり前だが、業腹だ。プリインストールしてあるソフト、全部捨てろとおっしゃいますのかようメーカーさん。それを称して阿漕、と昔からいうのだ。特にリカバリーCD付きのリブレット70と違って、リブレット60の場合は、自分の大事に育てた環境を復元するのは100%無理だ。涙を忍んでプリインストールのソフトは捨てざるを得ない。だれが何といおうと阿漕ではないか。
 が、待てボーイズ。その冷たい冷たい阿漕さを『DriveCopy』の魔力が見事にクリアしてくれるのだ【注1】
 ボーイズのようなウィンドウズ世代と異なり、旧石器時代から生き残るオタクという魔法(DOS)使いたちは、ソフトメーカーの裏をかく原始の暗黒魔術を心得ていた。
 ああっ、あのおぞましくも忌まわしいぞっとする暗黒魔界(DOS)の呪文を今更、唱えなきゃならないのかよおっ、と頭を抱えて嘆くな、ボーイズ。
 写真を見よ。これなる『DriveCopy』という名の魔法の杖で、難関突破だ!
 さて、わが愛機の上段リムーバブル・ラックにはマッサラなおニューの大容量HDD、下段には夥しいデータを呑んだ旧HDD。これを、ちょっとした呪文で、下段から上段へと完璧に全データを引っ越しさせるという魔法だ。暗黒DOS帝国には違いないが、うんと短いから、ボーイズは一時の辛抱だ。
 まず、ウィンドウズの起動ディスクを、フロッピードライブに突っ込み、マシンを起動。あの嫌な暗黒画面に、絶望感を与える無表情な忌まわしい“A:>”という陰気な白抜き文字が出現したら、起動ディスクを引っこ抜き、『DriveCopy』の付属フロッピーと挿し替える。
 そして僅か4文字、PQDC、とキーボードから打ち込み、ENTERキーを押すのだ。な、簡単だったろうが? くれぐれも言っておくが、肝心のデータ満載の旧HDDは下段だぞ。あくまでもDドライブだってことだけは、死んでも忘れるな。上下を逆に挿入すると、あっという間に全データは残らず空に帰ってしまう。深呼吸をして心を鎮め、神様のご加護を願い、過ちのないようにな。

愛機リブレットを緊縛SM責めから解放

PHS無線カード
三菱電機の『PHS無線カード』。
PHS DATA LINK
SII『PHS DATA LINK』。
スロットからの飛び出し部分が、
こんなに短くなるのだ。
CARD
スロット外の部分が長いだけでなく、
三菱のほうは、ぴょこんと
小さいアンテナが立つのが、
ちょっと邪魔なのだ。
 さて、今回のテーマだ。ワシは大嫌いなのだ。あらゆるコードというコード、まるで絡み合った無数の邪悪な蛇のように縺れるコード、ワイヤー、ケーブル、紐、縄、針金の類一切合切が。心底許せんのは、パソコンの裏だ。おのれら、よくもここまで宇宙の熱死を推進させたものだな、と呟きたくなる。これは混沌だ。幻魔大王レベルだ。致命的スタパ量の持ち主なら、このテーマだけでも週アス全誌面を3カ月間埋めつくすことが出来ると思うぞ。
 せめて、愛機リブレットだけでも、この種の緊縛SM責めから解放してやりたいのである。その通り! ワシは大嫌いなのだ、あのケイタイからだらしなくずるずると延びたヒモで、美しいリブレットが絡め取られる姿が!
 そこで、今回はスッキリと行くぞ。ヒモ無し、ケイタイも無しだ。1枚のPCカードでPHS電話機、というカード型PHSを、リブレットのスロットにそっと滑り込ませる。ううむ、美しいぞ。なんというシンプル・ビューティーか。
 ところで超小型パソコンであるリブには、たった1個のスロットがあるのみだ。SMはやめるが、常時あそこにカード型PHSを挿入しっぱなしというポルノ小説の神髄を、パソコン関連の記事にメタ化するのだ。
 何を言ってるのかわからん? 精力絶倫のボーイズよ、気を鎮めてワシの話をよく聞け。たとえば、ポルノコミックを、格闘技コミックにメタ化する。するとどうなると思うか? ポルノコミックの主人公はエロ的超人だ。99・9999999パーセントの人生をエロの実践に過ごす、巨大なちん〇の権化だ。
 それをメタ化すると、あの超人的にバカ強い格闘技マンガの主人公になる。人生の根幹はエロであり、エロをメタ化することによって、大衆はプロレス・アディクトという中毒者の三昧なる境地に到達するのだ。ボーイズども、ようやく人生の要諦がわかってきたろう?
 写真を見よ。このカード型PHSは、三菱PHS無線カードという長たらしい商品名だ。生意気なヤツだ、たかがカードの癖しやがってPHSと無線と二枚看板を持っていやがる。だいたいPHSって無線だろうが? 無線でないPHS見せてみろ。足を留めてまだ難癖をつけている平井和正を置き去りに、われわれは先へ進むぞ【注2】
 ここで新顔登場! で、呆気なくわれわれは三菱PHS無線カードを見捨てる。新顔はSII(セイコーインスツルメンツインダストリー。長い長すぎるぞ)の『PHS DATE LINK』(アキバ、Laoxモバイル館2Fで獲得。ここにはわたしの愛読者が棲息。アキバでサインを求められたのは初めてだ)。

いきなり直面したスロット問題に動揺?

 途端に問題発生だ! リブ者ならだれでも知っている、ピュアな美しいリブレットはPCカードを1枚しか絶対に受け付けない、道心堅固、貞淑なスロットの持ち主だ。ゆえに真のリブ者はリブレット100を正統的リブとは断じて認めない。あれは淫奔でふしだらな非行リブが、普通サイズのノートパソコンと不義密通した所産なのである。
 ところがリブ者ならだれでも知っていることだが、たったひとつきりのスロットを、リブレット専用FDDは平気な顔で占領しくさるのだ。すると、どうなる? インストールの目的を持って挿入されるべきカード型PHSは、先を越されてスロットを占領され、猛り立った意馬心猿の向け所を失ってしまうのだ。ぐわあっ。フラストレーションで狂いたったこのカード型意馬心猿が暴れ出したら、どうしてくれるんだよおっ。だいたい別売のポートリプリケーターなんて、急場に間に合うものかっ。いつだって思い立った時は深夜とか早朝に決まりきっているんだからなあっ。どうしてくれる!?
 ボーイズども、猛り立ったカード型男根を握りしめて怒鳴り散らさんでもよいぞ。ここに名案があるのだ。パワーユーザーたらゆう魔法(DOS)使いは黙れ! 100万人の新入りウィンドウズ使いは、あのわずか一字間違えても、お役所の冷たい非人間的な窓口の顔つきと口調で書類を突っ返して寄越す、あの性悪の呪文(DOS)がみんなみんな死ぬほど大嫌いなのだ。
 うたて。いや、うざったい! ワシが漫画家のよしりんだったら、こんなながったらしい文章を書くまでもなく、数コマで手際よく読者に呑み込ませるのによう。つくづく、うたてである。ところで、ひらりんという呼び名は、漫画家のよしりんに倣って、と思っとるおぬしは認識が浅いぞ! ワシがなぜひらりんか、図解入りで見事に言い当てた読者には特別プレゼントがある。抽選で5名様、前回使用した『PortableDoc』をはじめとした、豪華プレゼントだ。ひらりんの千社札が貼ってあるぞ。見ん事当ててみせい! 全員外れでも、抽選で5名様に幸運の星が微笑む【注3】
 さて、こっちはクイズではないから、さっさといってしまう。あらかじめCドライブに『PHS DATE LINK』の添付フロッピーのドライバをコピーしてしまうのだ。“オマエもかSII”【注4】という名のフォルダを作っておく。リブレットが新しいハードに気づき問い合わせてきた時、Cドライブにあるフォルダを教えてやればよいのだ。
 これでトラブルは見事に解決だな。これっ、そんなの知ってるよ、と軽はずみなことをいうでない! ピタゴラスの定理を、今の時代に独力で再発見する人間は天才だぞ。学校教育抜きで、偉大な発見をなし遂げたのだからな。そんなの知ってると口走った人間より、確実に256倍は偉大だ。
 ところで、128、256、512……と続く数字、なんだか懐かしさを覚えていたが、あれは麻雀の点数の数え方と一緒だな。どうだ、ワシひらりんもピタゴラスの定理を再発見した無学天才級と紙一重だと思わんか?

ひらりんからのやさしい注釈集

【注1】
 次回は『DriveCopy』すら必要のない、簡単! 即決! 完全クローン製造法を取り上げる予定。
【注2】
 SIIの都合で『PHS DATA LINK』の発売が遅れに遅れ、もう間に合わんと判断していたのだが、辛うじて間に合ったので、急遽、当て馬だった三菱PHS無線カードは冷酷無残にも見捨てられたのである。ああもう、しょうがねえじゃんかよう。
【注3】
 プレゼントは雑誌の企画のため、応募は終了しています。
【注4】
 今年最大のマイトピックだったのが、このSIIから発売を早々と予告されていたカード型PHSだ。とにかく写真を一瞥しただけで強烈な執着と煩悩の虜と化した。ああっ、とにかく高集積で高稠密で高性能で、1枚のPCカードを超小型ノートパソコン、虎の子リブレットのスロットに挿入することで、全ての通信をカバーしてしまう!
 今年の初め頃から、発売を胸躍らせて待ち構えていたハードだ。わたしが胸躍らせて待っているというのに、3月発売のはずが5月発売、5月になると6月中旬、とずるずるずるずるだらしなくユルフン力士のマワシの如く延びに延びおった。もう駄目だ、この連載には間に合わんと本気で一時は覚悟したほどだ。間に合ったからこそ許すが、間に合わなければ先発組の三菱PHS通信カードでお茶を濁さなければならんかったぞ。
 写真ら映ってるかたっぽが三菱で、三菱でないほうがSIIだ。三菱のはベビーのちんこみたいなちんこいアンテナがイッチョマエにぴん、と勃(た)つのはかわゆいが、如何せん邪魔だ。操作のたびにベビーのちんこがもげそうになり、さらにべろん、と5センチもあるハミダシがキツいのが難である。アンテナが操作の邪魔だわ、性能的にも後発SIIの尻目にかけられるわ、美観では更に大きく差をつけられるわで、気の毒な結果になったな。
 その点、後発で得をしたのがSIIだ。しかし、SIIも褒め讃えようと思ったところ、こっちも前車の轍をしっかり踏んでおる。なぜなら、リブットはだなあっ、よいかっ、美しいスロットが一個しかないので、フロッピーとPCカードが同時には使えんのだあっ。ぜいぜい。仕方がない。これもあらかじめリブレットのCドライブに新しいフォルダをつくって、“オマエもかSII”と名付けたのは、前述の通り。ちょっと意地悪だったな。
 今のわたしは常時リブレットのスロットにSIIのカード型PHSを挿入したまま持ち歩いている。
【注5】
 えっ、【注5】なんてあったか? ここで苦言があるのだ。なにもこのSIIだの三菱だのの取説に限らん。しかし、どうしてこうも、いつまでも当然のことであるかの如く、り説は天然自然読みにくいものとして、でかいツラで通用しておるのだ? 取説の読みにくさわからなさには明白な理由があると思うぞ。それはよう、技術オタクが取説を仕切っているせいだ。
 どこの世界でもそうだが、オタクはトーシロを心底から侮蔑しておる。一般人を人類の埒外と見做しているのがオタクだ。オタクにとっての人間とは、同じオタクの仲間だけなのである。だからこそ、一般人の心がわからず、わかろうとする気もなく、問答無用の暴力主義の文章を平気で書き散らす。最初から、わからせようなんて気はさらさらないのである。
 我が家でもそうだ。ウチのマイサンもオタクだ。ウチのカミサン(マイサンの母だ)がパソコンのことで、何か質問しようものなら、百発百中で喧嘩になる。
「もお、いいっ。アンタなんかに何も訊かないっ」とカミサンが怒り声を投げつけ、皿小鉢が飛び、電子ジャー、電気冷蔵庫が飛ぶ(百万倍誇張だ、許してくれカミサン)。同じ質問にわたしが答えれば、ちゃんとカミサンも理解するのだが、それがオタクのマイサンにはわからない。つまりだ、オタクはこう考える。
「こんなアボカドにもわかるカンタンなことが、どうしてコイツラにはわからんのか、謎だ」
 それだ! その傲慢な考え方こそが、オタクの手に負えん中華思想というものなのだ! だからこそ、今更、取説にDOSなんか持ち出すなよ、とわたしは心からメーカーに諫言するぞ。
 今時のウィンドウズ世代のユーザーに、DOS(ATコマンドなど)を使わせて苦しめないように極力配慮すべきではないか? 舌足らずで説明不足、それがあらゆるオタク支配下にある取説共通の不快な特徴である。わたしは魔法使いであるから、一字一句、間違わずに唱えないと効かない魔法(DOS)が最下位に属する低級魔法であることを知っておる。
「開け胡麻……」というヤツだ。それも必ずアラビア語でいわないと効き目がない。英語でも中国語でもはたまたクロアチア語でも駄目。なっ、DOSとそっくりであろうが。最高級の魔法は、神様の魔法で、「光あれ」というのだ。あっと言う間に宇宙がそっくり出来上がる。だから、もうDOSはやめれ、と衷心よりご忠告申し上げる。もうそんな時代じゃないんだし、取説もエッグヘッドの技術オタクにまかせきりにせず、文科出の技術にも造詣のある人材とコンビでやらせるのだ。まともな文章を書ける人材に監修させるのは、絶対的必要条件だぞ。
 で、旧石器時代から新石器時代へ、という顕著な変化を示す、SII謹製のカード型PHSを常時挿入しっぱなしの、超メタエロの、わたしの虎の子リブレットをお目にかけることにする。現状のパソコン事情って、やっぱり電子的新石器時代の真っ最中だな。
協力:週刊アスキー編集部、イラスト:余湖裕輝
<週刊アスキー 1998.10.1掲載>
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